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3年間をふり返って

 

ウィーン日本人国際学校の良さ。それは上級生と下級生が一緒になって仲よく遊ぶ昼休み。ホール全体に響き渡る子どもの声。私は昼休みが大好きだ。

しかし、私が着任した3年前は全く違った。コロナ感染予防で、子ども達は学校では遊ぶことができなかった。人と人との接触が制限され、一緒になって歌ったり、遊んだりすることができなかった。学校は閉じていた。

2020年4月の始業式、入学式中止、オンラインによる着任式、5月の新緑大運動会中止、6月の宿泊学習中止、8月の創立記念式典は校内で実施。すべての学校行事が中止となった。子どもが寂しそうだった。9月に校外学習を強行し、カルヌントゥムに遠足に出かけた。子どもの笑顔が少し戻ったと感じた。

そしてウィーンは冬に入った。コロナ感染者が激増し、4回のオンライン授業を実施した。3月の卒業証書授与式は、卒業生とその保護者が参加し、在校生はオンラインでの参加だった。コロナが学校の日常を奪った2020年だった。

2021年度に入っても状況は変化がなかった。4月の入学式は、新入生と保護者のみで実施、在校生はオンライン参加。5月の新緑運動会も中止、6月の宿泊学習も中止した。校長の私は、学校を閉じることだけは絶対にしたくなかった。学校とは子どもと教師が対面で行う教育活動を行う場。昭和的なアナログ感が大切であり、デジタルだけでは心が育たないというのが私の信念だ。低学年の児童は、オンラインの授業が続くことは苦痛だ。とにかく、私は、子どものために学校を閉じたくなかった。

2021年度の夏ごろから、コロナ感染予防は緩和の措置がなされ、10月の持久走記録会、スポーツフェスタを実施した。学校の日常が少し戻ってきた2021年だった。

そして、2022年に入った。コロナ感染予防をしつつ、学校の日常が戻ってきた。4月の始業式、入学式で日本国の国歌、校歌を子どもたちが歌う姿を見て、学校の日常が戻ったと実感した。5月の新緑大運動会を3年ぶりに開催した。この年に開催できなかったら、私の任期中はないと覚悟して臨んだ。夏の宿泊学習、創立記念式典、プルカウ校との交流、学習発表会等の学校行事を無事に実施できたことが何よりうれしかった。コロナから学校の日常を取り戻した2022年であった。

コロナと対峙した3年間を振り返ると、私たちは、学校行事ができず辛い思いをしたことが多くあった。しかし、試練の時があるからこそ、それを乗り越えたときの日常の有り難さに、感謝する心が生まれることを知った。

20233月、学校のホールに、子ども達の声が響き渡っている。学校の日常が戻った。私は今日も昼休みの子ども達が楽しくドッチボールする姿を見て、元気な気持ちになれる。子ども達にいつも感謝だ。この3年間、「挨拶、掃除、やさしい言葉と猛勉強」を合言葉に学校生活を送ってくれた子どもたち、そして同じベクトルで教育活動に取り組んでくれた先生方、本当にありがとうございました。

最後になりましたが、学校の日常品や扇風機をご寄付いただいたPTA会長及び評議員、保護者の皆様、ありがとうございました。また、理事長はじめ理事会の皆様、日本人会、日本国大使館の皆様、今後とも、ウィーン日本人国際学校に変わらぬご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。(校長 波多江 修)